第1章:賃貸退去時の原状回復義務とは?フローリングの基本ルール
〜「張替え=借主負担」と誤解しないために〜
賃貸物件を退去する際、
フローリングの傷や汚れを理由に
高額な張替え費用を請求されるのではないかと不安に感じる方は少なくありません。
しかし、結論から言うと、
フローリングの張替え費用が必ず借主負担になるわけではありません。
まずは、原状回復義務の正しい考え方を理解することが重要です。
原状回復義務とは「元通りにすること」ではない
多くの方が誤解しているのが、
原状回復=「入居時の状態に完全に戻すこと」という認識です。
実際の原状回復義務とは、
借主の故意・過失・通常を超える使用によって生じた損耗を回復すること
を指します。
つまり、
- 普通に生活していて生じた傷
- 時間の経過による劣化
これらまで借主が負担する義務はありません。
民法改正で明確になった原状回復の考え方
2020年の民法改正により、
原状回復義務の範囲はより明確になりました。
改正後の民法では、
- 通常損耗
- 経年劣化
については、
借主の原状回復義務に含まれないと明確に整理されています。
フローリングの場合も、
日常生活で自然に生じる
- 軽微な擦れ
- 色あせ
- 生活動線上の摩耗
は、貸主負担と考えられるのが原則です。
国土交通省ガイドラインが示す基本ルール
賃貸トラブルの判断基準として、
多くの場合に参照されるのが
**国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」**です。
このガイドラインでは、
フローリングについて次のような考え方が示されています。
- 通常使用による摩耗 → 貸主負担
- 借主の不注意による傷・汚れ → 借主負担
重要なのは、
「なぜ傷がついたのか」という原因です。
フローリングで問題になりやすいポイント
退去時にトラブルになりやすいのは、
次のようなケースです。
- 家具の設置跡
- キャスターによる擦れ
- 日焼けによる色ムラ
- 軽度のカビ跡
これらは一見すると「傷」に見えますが、
すべてが借主負担になるわけではありません。
生活上避けられない範囲かどうかが、
判断の分かれ目になります。
「全面張替え=借主負担」と言われたときの注意点
退去時に、
「フローリングは全面張替えになるので全額負担です」
と説明されることがあります。
しかし、
- 部分的な損傷で済むケース
- 経年劣化が進んでいるケース
では、
全面張替え費用を借主が負担する合理性は低いと考えられます。
まずは、
「どの部分が、どの理由で借主負担なのか」
を確認することが大切です。
第1章まとめ
賃貸退去時のフローリングについては、
次の点を押さえておくことが重要です。
- 原状回復=完全に元通り、ではない
- 通常損耗・経年劣化は借主負担ではない
- 判断基準は「原因」と「程度」
- 全面張替えが必ず正当とは限らない
この基本ルールを理解しておくことで、
不当な請求に対しても冷静に対応できるようになります。
次章では、
👉 第2章:フローリング張替え費用の相場はいくら?【畳数別】
を詳しく解説します。
第2章:フローリング張替え費用の相場はいくら?【畳数別】
〜「いくらが妥当か」を知るための基準〜
賃貸退去時にフローリングの張替え費用を提示されると、
「この金額は高いのか、妥当なのか」が分からず、
そのまま受け入れてしまう方も少なくありません。
しかし、相場を知っていれば冷静に判断できます。
ここでは、畳数別のフローリング張替え費用の目安と、
金額に差が出る理由を整理します。
フローリング張替え費用の基本構造
フローリング張替え費用は、
大きく分けて次の要素で構成されています。
- 既存床材の撤去費
- 新しいフローリング材の材料費
- 施工費(人件費)
- 廃材処分費
そのため、
単に「床材の価格」だけでなく、
工事全体の費用として考える必要があります。
畳数別|フローリング張替え費用の目安
一般的な賃貸物件で使われる
量産型フローリングを前提とした場合の
おおよその相場は以下の通りです。
| 畳数 | 張替え費用の目安 |
|---|---|
| 4畳 | 約6万〜10万円 |
| 6畳 | 約9万〜15万円 |
| 8畳 | 約12万〜20万円 |
| 10畳 | 約15万〜25万円 |
※物件の構造や地域、施工条件によって前後します。
この金額を知っておくだけでも、
極端に高い請求かどうかを見極めやすくなります。
部分補修と全面張替えの費用差
フローリングの傷や汚れが
一部に限られている場合、
必ずしも全面張替えが必要とは限りません。
- 小さな傷 → 補修で対応できる場合あり
- 一部の変色 → 部分交換の可能性あり
部分補修であれば、
数万円程度で済むケースもあります。
にもかかわらず、
全面張替えしか選択肢が提示されない場合は、
理由を確認する必要があります。
フローリングの種類による価格差
張替え費用は、
使用するフローリング材の種類によっても変わります。
- 量産型フローリング:比較的安価
- 高機能フローリング:やや高額
- 無垢フローリング:高額になりやすい
賃貸物件では、
量産型フローリングが使われていることがほとんどです。
高級材を基準にした見積もりであれば、
妥当性を慎重に確認する必要があります。
「減価償却」が考慮されているかが重要
フローリングには、
一定の耐用年数(減価償却期間)が設定されています。
仮に、
耐用年数を超えて使用されている床であれば、
張替え費用を全額借主が負担する合理性は低いと考えられます。
見積もりを見る際は、
- 施工から何年経過しているか
- 減価償却が考慮されているか
を必ず確認しましょう。
第2章まとめ
フローリング張替え費用を判断するうえで、
相場を知ることは非常に重要です。
- 畳数ごとのおおよその費用目安を把握する
- 部分補修で済む可能性を確認する
- 床材の種類とグレードを見る
- 減価償却が反映されているかを確認する
これらを意識することで、
不必要に高い請求を見抜きやすくなります。
次章では、
👉 第3章:フローリング張替え費用は誰が負担する?ケース別解説
を詳しく解説します。

第3章:フローリング張替え費用は誰が負担する?ケース別解説
〜借主負担・貸主負担の分かれ目を整理〜
賃貸退去時のフローリング張替えで、
最もトラブルになりやすいのが
**「この費用は誰が負担するのか」**という点です。
結論としては、
フローリングの状態だけでなく、
傷や汚れが生じた原因によって負担者が決まります。
ここでは、代表的なケースごとに
借主負担・貸主負担の考え方を整理します。
借主負担になりやすいケース
次のような場合は、
借主の故意・過失・通常を超える使用と判断され、
借主負担になる可能性が高くなります。
- 重い家具を引きずってできた深い傷
- キャスター付き椅子による著しい擦れ
- 飲み物をこぼしたまま放置してできたシミ
- ペットによる引っかき傷・汚損
- 結露や水濡れを放置して発生したカビ
ポイントは、
「注意すれば防げたかどうか」です。
適切な管理を怠った結果生じた損傷は、
借主負担と判断されやすくなります。
貸主負担になるケース
一方、次のようなケースは
通常損耗・経年劣化として、
貸主負担になるのが原則です。
- 日常生活による軽微な擦れ
- 家具を置いていたことによる設置跡
- 日焼けによる色あせ
- 年数経過による表面の摩耗
これらは、
普通に生活していれば避けられない変化であり、
借主に責任を求めるのは適切ではありません。
カビ・変色がある場合の判断ポイント
フローリングのカビや変色は、
原因によって負担者が分かれます。
- 換気不足・水濡れ放置が原因 → 借主負担
- 建物構造・断熱不足が原因 → 貸主負担
見た目だけで判断せず、
「なぜ発生したのか」を確認することが重要です。
全面張替えが必要と言われた場合の考え方
部分的な損傷にもかかわらず、
「全面張替えが必要」と説明されることがあります。
しかし、
- 部分補修で対応可能
- 経年劣化が進んでいる
といった場合、
全面張替え費用を全額借主に負担させるのは不合理
と考えられるケースもあります。
張替え範囲と理由を、
具体的に確認しましょう。
契約書に「特約」がある場合の注意点
賃貸契約書に、
フローリングに関する特約が記載されていることがあります。
ただし、
- 内容が不明確
- 借主に一方的に不利
- ガイドラインに反する
このような特約は、
必ずしも有効とは限りません。
特約があっても、
その内容と妥当性を確認することが大切です。
第3章まとめ
フローリング張替え費用の負担者は、
次のポイントで判断されます。
- 原因が借主の過失かどうか
- 通常損耗・経年劣化に該当するか
- 張替え範囲が妥当か
- 特約内容が合理的か
「傷がある=借主負担」ではありません。
冷静に条件を整理することで、
不当な請求を防ぐことができます。
次章では、
👉 第4章:高額な張替え費用を請求されたときの正しい対処法
を解説します。
第4章:高額な張替え費用を請求されたときの正しい対処法
〜その場で「了承」する前に確認すべきこと〜
賃貸退去時、
フローリングの張替え費用として
想定よりも高額な請求を受けると、
「早く終わらせたい」「揉めたくない」という気持ちから、
内容を十分に確認せず了承してしまうケースがあります。
しかし、
一度同意してしまうと、
後から覆すことは簡単ではありません。
ここでは、高額請求を受けた際に
冷静に取るべき正しい対処法を解説します。
その場で同意・サインをしない
まず最も重要なのは、
その場で即答しないことです。
- 口頭での了承
- 書類への署名
- 精算書へのサイン
これらは、
内容に同意した証拠として扱われる可能性があります。
「一度持ち帰って確認したい」
この一言で問題ありません。
見積書・内訳の開示を求める
請求内容に納得できない場合は、
必ず見積書の内訳を確認しましょう。
確認すべきポイントは以下の通りです。
- 張替え範囲(全面か一部か)
- 畳数・㎡数
- 使用する床材の種類
- 工事内容(撤去・施工・処分)
「一式〇円」といった表記だけの場合、
妥当性を判断することはできません。
相場と照らし合わせて判断する
前章で解説したように、
フローリング張替えには一定の相場があります。
- 相場とかけ離れていないか
- 部分補修で済む内容ではないか
- 減価償却が考慮されているか
これらを確認することで、
過剰請求かどうかの判断材料になります。
写真・入居時資料を活用する
負担割合の判断では、
入居時と退去時の状態比較が重要です。
- 入居時の写真
- チェックシート
- 設備状況表
これらが残っていれば、
「元々あった傷」「経年劣化」であることを
説明しやすくなります。
退去立ち会い時には、
こちらからも写真を残しておくことが有効です。
貸主・管理会社と冷静に交渉する
請求に疑問がある場合でも、
感情的に反論する必要はありません。
- 原状回復の考え方
- ガイドラインの存在
- 相場との比較
これらを踏まえ、
事実ベースで確認・相談する姿勢が大切です。
多くの場合、
冷静な話し合いで修正されるケースもあります。
第三者相談先を知っておく
話し合いが難しい場合は、
以下のような第三者相談先を利用する選択もあります。
- 消費生活センター
- 各自治体の住宅相談窓口
- 不動産適正取引推進機構
「相談したい」と伝えるだけでも、
対応が変わるケースは少なくありません。
第4章まとめ
高額なフローリング張替え費用を請求された場合でも、
慌てて同意する必要はありません。
- その場で了承しない
- 見積もり内訳を確認する
- 相場・減価償却をチェックする
- 冷静に相談・交渉する
これらを意識することで、
不必要な負担を避けやすくなります。
次章では、
👉 第5章:フローリング張替え費用を抑える方法と入居中の予防策
を解説し、記事を締めくくります。

第5章:フローリング張替え費用を抑える方法と入居中の予防策
〜「退去時に慌てない」ためにできること〜
フローリングの張替え費用は、
退去時になって突然発生するものではありません。
入居中の過ごし方や、退去時の対応次第で、負担額を抑えられる可能性があります。
この章では、
張替え費用を抑えるための考え方と、
入居中から意識しておきたい予防策を解説します。
小さな傷は「張替え」ではなく「補修」で済む場合がある
フローリングにできた傷が、
必ずしも張替えを必要とするとは限りません。
- 家具移動時の軽い擦り傷
- 表面の浅い引っかき傷
- 目立たない部分の小傷
これらは、
補修対応で十分なケースも多くあります。
退去時に張替えを前提とした説明を受けた場合でも、
「補修では対応できない理由」を確認することが大切です。
入居中にできるフローリング保護対策
日常生活の中で、
少し意識するだけでフローリングの劣化を防げます。
- 家具の脚に保護フェルトを付ける
- キャスター付き椅子の下にマットを敷く
- 重い家具は引きずらず持ち上げて移動する
これらは、
張替え費用の原因になりやすい深い傷を防ぐ効果があります。
布団・ラグによる湿気対策を忘れない
フローリングの張替え原因として意外に多いのが、
カビや湿気による変色です。
- 布団を敷きっぱなしにしない
- 定期的に床を乾燥させる
- ラグの下も換気する
特に、
結露や湿気が溜まりやすい部屋では、
床の状態を定期的に確認することが重要です。
入居時・退去時の「記録」が費用を左右する
フローリングの費用トラブルを防ぐうえで、
写真などの記録は非常に有効です。
入居時にやっておきたいこと
- 床の傷・色ムラを写真で残す
- チェックシートに記載する
退去時にやっておきたいこと
- 立ち会い前に床の状態を撮影
- 指摘された箇所を記録する
これらがあるだけで、
経年劣化かどうかの判断材料になります。
クリーニング費用と張替え費用を混同しない
退去時の請求書では、
- ハウスクリーニング費
- フローリング修繕費
が一緒に記載されることがあります。
それぞれの費用が
何に対する請求なのかを分けて確認することで、
不要な負担を避けやすくなります。
第5章まとめ
フローリング張替え費用は、
工夫次第で抑えられる可能性があります。
- 張替えが本当に必要か確認する
- 入居中から床を保護する
- 湿気・カビ対策を行う
- 入退去時の記録を残す
「退去時だけ気をつける」のではなく、
入居中から意識することが、
結果的に大きな差につながります。
✅ 記事全体まとめ
賃貸退去時のフローリング張替えは、
必ずしも借主が全額負担するものではありません。
- 原状回復義務の正しい理解
- 張替え費用の相場把握
- 負担区分の判断
- 高額請求への冷静な対応
- 入居中からの予防
これらを知っておくことで、
不当な請求に対しても落ち着いて対応できます。



